みなさん、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の映画「レヴァナント:甦れりし者」は観られましたでしょうか。
2015年に公開されたレオナルド・ディカプリオ主演のアメリカの映画です。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督とレオナルド・ディカプリオはこの映画でアカデミー賞を受賞しました。
極寒の大自然の中での復讐劇。2時間半程あるのですが、ずっと張り詰めた空気が続き、最後までそれは途切れることはありません。この世界に惹きこまれディカプリオと同化し、最後はぐっと疲れてしまいますが、とにかく映像とサウンドが極上に美しい映画です。
この映画の音楽を坂本龍一とドイツの電子音楽家であるアルヴァ・ノト(ALVA NOTO)ことカールステン・ニコライ (Carsten Nicolai )が担当しています。2016年のゴールデングローブ賞作曲賞にもノミネートされています。
とにかくこのサントラが素晴らしい!とにかく買って聴いてください!がいきなりの結論です(笑)。
癌と闘病を終えたばかりの坂本龍一に監督から依頼が
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督は、坂本龍一の大ファンということもあってか、この映画の音楽担当は坂本龍一にやってもらうと以前から決めていたとのこと。
2015年の4月の終わり突然LAに来てくれと連絡があったようです。
坂本龍一曰く拒否権はなかったそうで(笑)。
坂本龍一もアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の大ファンだった
坂本龍一は癌と闘病を終えたばかりで、これを受けてしまうと本当に死んでしまうかもしれないと思った。しかし、イニャリトゥ監督は前作でもあらゆる賞を総なめし、キャリアのピーク中のピークにいる中で自分に音楽を依頼してきた、「こんな事は一生一度あるかないかだな」と思い、覚悟を決めたそうです。「死んでもいいからやるか」と。
いやあ、凄いですよね。ホントかっこいい。
オーダーはメロディではなく”サウンド”
イニャリトゥ監督からの音楽のオーダーは、メロディを書くのではなく、音(サウンド)を書いてほしいということでした。坂本龍一はご存知のとおり総体的にピアノの人であり、アルヴァ・ノト(ALVA NOTO)はコンピュータから生み出すグリッジや環境音、ノイズの人。
過去に坂本龍一とアルヴァ・ノトはコラボでアルバムを作ったりしています。いわゆる懇意の中で、今回も坂本龍一の方からアルヴァ・ノトに手伝ってほしいと依頼をしたそうです。
坂本龍一は言っています。「実は僕はメロディを書くのが苦手なんですよ。昔は現代音楽が好きだったし、ジョン・ケージも好きだった。メロディより音色やテクスチャを作る方が得意だし、好き」だと。
音は重厚なストリングスをベースとした環境ノイズ
音の方(サントラ全体)はストリングスが大きく導入され、タイトル曲はもちろん、場面音楽でもストリングスの不協和音と電子ノイズが融合された音になっています。
これが本当にとても美しく、張り詰めた空気を作り出しているんだけど、同時に極寒の自然の中で死んでいくような、意識が希薄になり死に向かっていくような催眠作用的なものがあります。
坂本龍一の「死」の意識から生み出される緊迫したサウンド
これ、やっぱり普通のサントラでは味わえないものがあります。人が死に向かい合っている時に作り出す音。ソリッドでかなりエッジが効いている。その緊迫感にこちらも感覚を研ぎ澄まされていく。こうやって言葉でいうと陳腐な感じになってしまいますが、とにかく極上の美しさと生に対する儚さを持った音楽です。
「レヴァナント:甦れりし者」のサントラは坂本龍一のアルバム「async」の序章
このブログでも頻繁に出てくる坂本龍一の最新アルバム「async」。僕はこのアルバムを昨年の私的No.1にあげていますが、本当に大好きなアルバムです。
このアルバムの前に作られたアルバムがこの「レヴァナント:甦れりし者」のサウンドトラックなんです。
サウンドのテクスチャーは「async」と近しいものがります。なので僕はこのサウンドトラックを「async」の序章と捉えています。まず「レヴァナント:甦れりし者」を聴いて、次に「async」を聴くとまるで同じアルバムの様に聴こえてくるんです。
まとめ
「レヴァナント:甦れりし者」を観た方もまだ観ていない方も是非買って聴いてみてください。これ単体で聴くのもよし、映画を観てから聴くのもよし、サントラを聴いてから映画を観るのもよしです。おすすめです。是非!
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