みなさま、こんにちは。猛暑が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。まいど、ご贔屓にしていただきまして、誠にありがとうございます。
これを書いているのは2022年8月19日。外で10分過ごすと汗だくになるレベルのいいお天気です。
こんな時はクーラーの効いた部屋の中で、ゆったりと読書するに限ります。
さて、最近読んだのはこちらです。橘玲(たちばな あきら)氏の「読まなくてもいい本」の読書案内 ──知の最前線を5日間で探検する (ちくま文庫)。
非常に面白かった。ジャケ買いならぬ、タイトル買いです。そりゃそうです。「読まなくてもいい本のおすすめ」とは!
この記事のタイトルを「1億2986万4880冊の本のうち読むべきものはたった89冊だけだ説!」とぶちあげましたが、これは少しデフォルメさせてもらいました。本文中、このようなことは書いていません。
「1億2986万4880冊」とは?
これは本文中にあります。シリコンバレーのベンチャー、ハルシオン・モレキュラー社のオフィスには、「人生がもっと長くなったら何をしますか?」というポスターが貼ってあり、さらにコピーとして「現時点で1億2986万4880冊の書物の存在が確認されています。あなたは何冊読みましたか?」とあるそうです。
これは何かの皮肉なのでしょうか(笑)?つまりこういうことでしょうか。「人生の時間は限られているのだから、読書するならあなたにとって本当に有益な本を選びなさいよ」と。これがシリコンバレーのベンチャーの社内になぜ貼ってあるのか?という謎はスルーしときます。
そんなことわかってるよ!というのに答えようとしたのが、この「読まなくてもいい本の読書案内」です。
「たった89冊だけだ説!」とは?
これまたこの記事のタイトルでぶちあげています。これも本文中で89冊!と明示的にカウントされているわけではありません。
この本では「読まなくてもいい本の読書案内」と銘打っていますが、結果的には逆に読むべき本を89冊新たに紹介する形(数は自分で数えました)となっています。
しかしここで、「なぁんだ、結局読まない本の紹介じゃないんだね・・トホホ」としょげてはいけません(笑)。
名著であっても古い情報は切り捨てるというコンセプト
この本のサブタイトルは、「知の最前線を5日間で探索する」です。実はこちらがメインなんですね。文学に関しては、「情報」でくくるのは違和感がありますね。芸術ですから、「古い」云々で価値が上下するものではありません。なので、この本で対象にしているのは、あくまでノンフィクションであり、学術書であり、哲学書なども含まれるでしょうか。情緒に訴えかけるものではなく、いわゆる「情報」や「考え方」を扱う書籍になります。
橘は文中で述べています。要約します。「ここ半世紀で起こっている知のビックバンにより、とてつもなく大きな変化が起きている。これにより何千年も続いた学問分野(例えば哲学)が消滅してしまうかもしれない。そこで「知のビックバン以前」と「ビックバン以後」に書籍を分類し、前者の本を書籍リストから除外することにより、それを「読まなくてもいい本」と定義する。古いパラダイムで書かれた本を読んでも費用対効果に見合わない。」と。
なるほど、コンセプトはわかりました。そして、この本は、知のビックバンにおける、「知の最先端」を分野別に紹介していくことで結果的に上記を実現します。
橘玲が定義する「知の最先端分野」とは?
さてここからが、この本の本筋となります。知の最先端分野とは何でしょうか。これは目次を見ればいいですね。以下に紹介します。
目次
- 複雑系
1. 1970年代のロックスター
2. 「フラクタル」への大旅行
3. 世界の根本法則
追記 複雑系とカオス
ブックガイド(11冊 ※noriカウント) - 進化論
4. 10分でわかる「現代の進化論」
5. 「政治」と「科学」の文化戦争
6. 原始人のこころで21世紀を生きる
ブックガイド(16冊) - ゲーム理論
7. 合理性とMAD
8. 「行動ゲーム理論」は世界の統一理論か?
9. 統計学とビッグデータ
ブックガイド(17冊) - 脳科学
10. 哲学はこれまでなにをやってきたのか?
11. フロイトの大間違い
12. 「自由」はどこにある?
ブックガイド(21冊) - 功利主義
13. 「格差」のある明るい世界
14. 社会をデザインする
15. テクノロジーのユートピア
ブックガイド(24冊)
- リベラル化する世界の分断【文庫版書き下ろし】
- あとがき
- 文庫版あとがき
- 解説『構造と力』の裏面史?いや、こちらが表面だった … 吉川浩満
個人的に好きな章
目次を見て、ワクワクする人もいれば、なんだかややこしそうだなと思う人もいらっしゃると思います。僕はその中間あたりでした。
それぞれの内容を詳しく説明するのは、ネタバレにもなりますし、面白いから是非読んでみてください!ということで、個人的に特に面白かった章について少し書きたいと思います。
1. 複雑系
僕の知っているところで言えば、「複雑系」って結構昔からあった分野だと思うのですが、最近ではかなり進化しているようです。
ここで出てくる話で、僕がとくにワクワクしたのが、「ドゥルーズ(1980年代の哲学・ポスト構造主義のスター)の主要概念『リゾーム』を一言で説明する」でした。ドゥルーズってロックスターみたいな存在でしたから、僕も隠れて彼の著作を買って読んだものです。結果、書いてあることが抽象レトリックの極みで何を言っているのかさっぱりわからん。何度読んでもわからん。『リゾーム』に関しては、「とにかく横」、「まんなかに集まらないこと」という解釈。最新ではブロックチェーンの概念を先取りしてたのかなとか感じたくらい。
しつこく諦めず読んではいましたが、途中で「これは仏教の経典と同じだ」と思いました。つまり、内容を理解するのではなく、感じるのだ!と。そんな感じで熱はフェードアウト。
そんなわけのわからない『リゾーム』の概念が3行でかいてある!へー!はー!
3. ゲーム理論
最近ゲーム理論流行ってませんか?Youtubeとか見ていても良く見かける気がします。
「劣化した民主主義」とか「選挙」、「政策」、そういったものをデータで解決する、だったり、経済学で解決したるわ!と。
この章で面白いのは、ゲーム理論を1962年に起きた米ソにおける「キューバ危機(核戦争をギリギリ回避した事件)」でのケネディとフルシチョフとの駆け引きをチキンゲームモデルで説明していくところです。へー!はー!滅法おもしろーい!!
5. 功利主義
2010年に刊行されたマイケル・サンデルの著作「これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)」で、急速に脚光をあびた政治哲学、倫理学。左とか右のお話です。功利主義は「最大多数の最大幸福」を追求するイデオロギー・考え方といわれますが、弱者を滅しかねないえげつない構造的欠陥があると、多くの人の批判にさらされ続けてきた古めの概念です。
だけどこの概念が淘汰されたわけではなく、近年は新しい功利主義にアップデートされて再度脚光をあびているようで。特にテック系=シリコンバレーでは、かなり過激な思想が展開されているみたい。
この章では功利主義と銘打っていますが、いわゆる「正義」にまつわる考え方の全体像がわかるようになっています。何気に生活に一番近い分野ではないでしょうか。
実は個人的に今、この分野に特に興味を持っています。功利主義、リベラリズム、リバタリアニズム、ネオリベ、コミュニタリアニズム他、知れば知るほどおもしろいんですよね。
橘玲の本のおすすめ
橘玲(たちばな あきら)氏の本は昔から結構好きでよく読んでいます。全部の著作を網羅しているわけではないですが、僕的に面白いなと思ったものを紹介しておきます。
マネーロンダリング
橘玲の著作の9割は、いろんな分野の指南書であったり、思想書なのですが、これはなんと小説です!もともと橘氏は金融系(投資、ファンド、マネー)の論者として出てきた人です。この小説はタイトル通りのテーマで、かなり唸ります。映画にしてほしいくらい(もしかしてなってる?)。とにかくスリリング、めちゃくちゃ面白い!橘玲の本で一番面白いものは?と聞かれたら迷わずこれをあげます。
臆病者のための株入門
結構古い本ですが、僕が最初に読んだ橘玲の本です。これでハマりました。株に興味がない人にもおすすめします。「お金」に関する考え方を変えてくれる本です。橘氏の醍醐味である、物事をいろんな角度から見る・捉えることでハッとさせる手法はこの本から変わりません。
臆病者のための億万長者入門
「臆病者のための株入門」の続編的な本です。これでも2014年ですか。もう6年前の本です。これも是非。橘節炸裂、真骨頂です。
不条理な会社人生から自由になる方法 働き方2.0vs4.0
これが最新刊(文庫化により)です。Withコロナの時代に入り、私たちの働き方もずいぶん変わりました。しかしこの本、リモートワークがどうのこうの、という軽い本ではありません。2022年、本当にいろんなことが世の中では起きています。そんないまだからこそ考えられるようになったこともあると思います。サラリーマンの僕には刺さりまくりました。
「読まなくていい本」の読書案内
今回紹介した本。
まとめ
さて、今回は橘玲氏の本を紹介しました。長年のファンですので、紹介できてよかったです。好きな本、おすすめしたい本がいっぱいあるので、また本について書きたいと思います。
それではみなさま、ご自愛ください。
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