長年愛用してきたスピーカーが遂に壊れた
いきなりですが、長年愛用してきた自宅の自作スピーカーがとうとう壊れてしまいました。
知り合いのオーディオマニア自作のなかなか味のあるスピーカーで、ユニットは1WAYですが、音はアナログの質感そのもの。全体的にバランスの取れた音を出してました。
音楽がない生活は僕にとっては危機的状況なので、マッハスピードでスピーカーを探し始めました。
絶対に譲れない条件
絶対に譲れない条件が一つありました。それは、写真のようにブックシェルフに入るスピーカーであることです。
僕は都内のマンションに住んでいるので、部屋が狭く、もちろん爆音を鳴らすのも無理です。たまにやりますが(笑)。
本当は大きなスピーカーが欲しいのですが、それは物理的に無理なんです。
具体的に言えば、高さが35センチ以内でないとブックシェルフに入らない。奥行や横幅はまあ何とかなるでしょう。
4つの候補
その条件でかつ、デザイン性やコストパフォーマンスの高さなどで絞っていった結果、4つのスピーカーが候補にあがりました。予算は10万程度。それ以上はさすがに嫁の稟議が通りません(泣)。
色々出てますが、ブックシェルフ型は大体このくらいの値段で収まるのではないでしょうか。ちょいはみ出てるものもありますが。
いきなり表にしちゃいますが、4つの候補のモデルは以下になりました。
メーカー | JBL | DALI | B&W | ELAC |
---|---|---|---|---|
拠点国 | アメリカ | デンマーク | イギリス | ドイツ |
モデル | 4312M Ⅱ WX | MENUET MR | CM1S2 MR | DEBUT B5 |
ユニット | 3WAY バスレフ型 | 2WAY バスレフ型 | 2WAY バスレフ型 | 2WAY バスレフ型 |
出力音圧レベル | 90dB | 86dB | 84dB | 85dB |
再生周波数帯域 | 55Hz~50kHz | 59Hz~25kHz | 45Hz~50kHz | 46Hz~20kHz |
インピーダンス | 6Ω | 4Ω | 8Ω | 6Ω |
サイズ(mm) 幅× 高さ× 奥行 | 181 | 150 | 165 | 200 |
300 | 250 | 280 | 324 | |
180 | 230 | 276 | 222 | |
重さ(kg) | 4.0 | 4.0 | 6.7 | 5.2 |
価格(定価) | \84,240 | \156,600 | \138,240 | \59,400 |
価格(店頭価格) | \73,800 | \108,000 | \124,010 | \56,970 |
デザイン(独断) | ◎ | ○ | ◎ | △ |
先に断っておきますが、僕はオーディオ機器の物理数値側面に関して、オーディオマニアの方のように精通している訳ではありません。
しかしながら、上の用語の説明を一応しておきます。
出力音圧レベル
低音域から高音域までの全域において、平均的・総合的にどの程度の音圧が得られているかを表したもので、この値が高いものは同じ出力のアンプであっても大きな音量が得られる能率の高いスピーカーと言えます。
再生周波数帯域
まず、人間の可聴域(聞き取ることのできる周波数の範囲)は20Hzから20kHzの範囲と言われています。
低い周波数の音は低周波とよばれ、公害の一種として注目されていますが、通常は聞き取ることができません。また、これより高い音も超音波と分類され、聞き取ることはできないとされています。
上記はあくまでも一般論です。僕は、この低周波と超音波の可聴範囲マックスの音が大好きです。これらを表現の手段としている人もいます。
比較的有名なのは、音響アーティストとして活動している「池田亮二」でしょうか。
彼の音楽は、低周波と超音波の極音で構成されています。それをミニマルテクノ風にアレンジしている曲も多いです。
インピーダンス
これが僕には一番難しい概念?なのですが、要は、「インピーダンス=電流の流れにくさ」とのこと。
ここで、流れにくさ??となってしまうのは僕だけでしょうか。
「インピーダンスが高いのは電流が流れ難く、インピーダンスが低いものは電流が流れ易いといえます。アンプのボリュームつまみを同じにすると、インピーダンスが低いほど、供給電力は大きくなります。」とのこと。
うーむ。。とまあ、こんな感じです。
4つのスピーカーの比較。僕の選んだのはJBLの「4312M Ⅱ WX」
上の表にありますが、それぞれ国も違うし、各要素の数値もスピーカーによって違います。
結論は表題でもう書いてますが、僕が選んだのは、JBLの「4312M Ⅱ WX」です。
やっぱり直感!
当たり前のことですが、僕はスピーカーを音で選びます。はっきり言って直観みたいなもんです。
ワタクシ音楽制作、バンド歴も長いので、耳には自信があります。
今回、ある家電量販店で2時間程試聴させていただいたのですが、4つともそれぞれ音は全然違いました。それぞれにいいところ、悪いところがありましたね。
厳選した4つのスピーカーのレビュー
試聴に持参した6つのアルバム
感想の前に、試聴用に僕が持って行ったCD(レコードはどこも不可と言われました)の紹介をしたいと思います。
まずは、チェット・ベイカーの晩年の名盤です。チェットの内省的でむせび泣くエロいトランペットがどう響くか楽しみです。ジャズのJBLといわれるだけに、まずはそこを聴いておこうと思いました。
家具の音楽で有名なエリック・サティ―です。この盤は、ラインベルト・デ・レーウというオランダのピアニストが、BPMを下げて弾いています。瞑想しているような効果を促すピアノ作品。これは寝るときによく聴いているだけに重要な作品です。ピアノの音はなによりも試しとかないと。
レディオヘッド。UKギターロックです。あえて初期の作品(1995年に発表された2nd)を選びました。このアルバムは、浮遊感あふれるギターサウンドや、美しいアコースティックの曲が入っています。トム・ヨークの声がどう響くのでしょうか。このアルバムはとても音が近い。90年代の録音の特徴かもしれません。
ポストジャズのジム・ブラックの作品です。このアルバムはJazzとハードコア(それほど激しくはない)をミックスした音楽で、かなりモダン。このスタイルの音楽はかなりレアといってよいと思います。この音をどう出してくるのかなあと気になります。
MC漢。新宿系ヒップホップ。この方見た目バリバリ怖いです。こんな人が前から来たら速攻逃げまが、音の方はカッコいいです。超高速なリリックと重い低音で一発で持ってかれます。試してみたいのは重い低音です。
最後に、かなりマニアックな音源を。福岡が生んだ形容し難いサウンドを鳴らすバンド、パニック・スマイルの自主製作1stの復刻盤です。個人的にこのバンドが昔から大好きなんですよね。彼らはアルバムごとに音がころころ変わるのですが、この1stは、低解像度のスカムノイズサウンドです。この録音状態が酷い、粗々な音がどう表現されるのでしょうか。
現代的な音と、原始的な音
音質に関して凄く乱暴に簡単に言ってしまいますと、
現代的な音 = デジタルな音、原始的な音 = アナログな音
と捉えていきます。
前者は非常にバランスが良く情報量の多いデジタル音源をそれぞれ特色はあるにせよ綺麗に再生する。
後者はアナログの豊かな音色、倍音が特徴的で、粗さはあるものの味、そして癖がある。
現代的な音 = デジタルな音
これらグル―プに入るのが、DALI「MENUET/MR」、B&W 「CM1S2/MR」、ELAC 「DEBUT B5」です。
それぞれの特色を述べていきます。あくまでも独断と偏見の感想です。
DALI「MENUET/MR」
全体的にバランスが良い。特に中音域を前に出す傾向がある。艶っぽい音色で、音像に奥行きを感じる。特にレディオヘッドは綺麗でしたね。サティのピアノも良かったです。
ただ、もちろん普通に音はすごくいいんですけど、なんというか、普通というか、、うーん。
チェット・ベイカーのトランペットは感情を失くしたように、綺麗に再生されてしまいました
情報量の多い音楽、やはりデジタルパッケージされた音楽向きですかね。ホント、現代的。
B&W 「CM1S2/MR」
まずデザインがいいですね。非常に上品。ミニマルデザインがすごく好みです。
サウンドの方はというと、DALIのサウンドを更にきらびやかにした感じですかね。DALIの中音域に加え、高音域も前に出してくる感じです。
こちらもバランスが抜群です。今回は持参しませんでしたが、クラシックも良く合うんじゃないでしょうか。
デザインからイメージしていた音とちょっと違いましたね。もっとな何ていうか、スマートな音をイメージしていましたが、いい意味で派手な音色でした。
ちなみにこれ、HMVRecordshopの店内スピーカーで採用されてました。アンプはマッキントッシュでしたね。やはり現代的な音でしたね。
ELAC 「DEBUT B5」
さて、今回の候補の中では安価なエラックです。ドイツのメーカー。ドイツは音楽機材を多く出している国で、特に今のベルリンは音楽系のスタートアップが集まり、音楽系のシリコンバレーと呼ばれています。
音楽制作ソフトウェア(DAW)もドイツ製のものは素晴らしいものが多いです。
肝心の音はというと、うーん。
凡庸な音でした。
可もなく不可もなくという感じでしょうか。いや、まさにこれがドイツサウンドなんです。非常にストイックな音なんです。
これはドイツのアナログミキサーにも通ずることです。ひたすらストイック。ここは好みですね。フラットでさすがはドイツという感じでした。
原始的な音 = アナログな音
さて、今度は後者に移ります。もうおわかりのとおり、このグループに属するのは、JBL 「4312M Ⅱ WX」のみです。
音。もう欠点だらけです(笑)。
他のスピーカーに比べると奥行きが足りないように感じる。立体感は独特で好みも分かれるでしょう。音像もぼやけ気味。低音もくっきりと言うより柔らかい感じ。アナログの質感でモコっとしてる。
これは何なんでしょうね。アメリカならではの雑な作りってやつでしょうか。
店員さん曰く、JBLは良くも悪くもJBLで、1950年代~60年代の音から変化していないそうです。あの頃のスピーカーに近い音なんですね。だからプリミティブ。
JBLの評価は真っ二つに分かれると良く聞きます。まさしくです。アンチ派の人たちはこれを、”ゴミ”と一蹴するそうですよ(笑)。
情報量が多い音楽にはついていけない感があります。でもなんだか、中毒性があるんですよね。不思議と。
でもね、JAZZのJBLと言われるだけあって、チェット・ベイカーが最高なんですよ!鳥肌が立つくらいに。この、うおおお!!きたあ!!という感じは他のスピーカーでは絶対に出せないでしょうね。パニック・スマイルも最高でした。いわゆる解像度の低い、粗い音像の音楽です。これがまた最高なんです!
たぶんですが、ちゃんとエージングをやってあげて、しっかりとしたインシュレーターを設置すれば音はかなり締まってくると思います。
試聴したお店ではインシュレーターすらかまされていなかったですから。ベースがアナログサウンドなのでそれをより現代的な音(中低音をくっきり引き締めたりetc…)に近づけていく施策はいっぱいありそうです。
僕は色んなジャンルの音楽を聴きます。クラシックや現代音楽も聴くし、ジャズもロックもテクノ、ハウス、ノイズ、民俗音楽 etc… オールジャンルで何でも聴きます
今回わかったのは、すべてのジャンルをカバーするスピーカーがあるとすれば、それは必然的に中途半端にならざるを得ないということです。もうブックシェルフスピーカーという時点で中途半端なんですけどね。
僕がこのJBL 「4312M Ⅱ WX」に決めた理由がまさしくこれです。欠点だらけだけど、時たま特大ホームランを打つスピーカー。癖が有り過ぎるスピーカー。
なんだかOS9時代のMacみたいじゃないですか。可愛いんです。
追記 2018.10.29)
僕の直感は当たっていました。今では、「欠点だらけの音」ではなく、「アナログの味をベースとしながら、現代的な音、繊細な音も4312独自の音で鳴らし、気になっていた音のモコモコ感も全くなく、中低音をくっきりがっつり鳴らし、高音域も美しく、独自の奥行き立体感も素晴らしい」という最高の状態で鳴っています。上で書いています「ベースがアナログサウンドなのでそれをより現代的な音(中低音をくっきり引き締めたりetc…)に近づけていく施策」を約1年かけてうちました。
やはりこの4312M Ⅱのポテンシャルを最大限引き出すのはアンプです。やっぱりアンプが重要です。これはエレキギターの音の追求と似ていると思います。エレキギターもギター本体がよいものでも、アンプの相性がよくなければ全くいい音は出ません。逆にアンプが高価でよいものでも、ギターがいまいちのものであれば、これもいい音は出ません。スピーカーはギター探しと似ているかもしれません。ギターでもストラト、テレキャス、レスポール、SG、セミアコ、フルアコ..と色んな形態のギターがあってそれぞれ音は全く違います。そこからまたメーカーや価格、製造年によっても音が変るのですから、それはもう選ぶのは大変(ここが楽しいんですけど)ですよね。そしてマイギターが決まってもアンプでさらに音が変ってくるのですから、自分の好みの音が出るようになるまでの道のりはすごく長くなります。とはいっても、何のギターを選ぶかで音の80%は決まってしまいます。これはスピーカーもおなじだと思います。長文になってしまいました。。4312M Ⅱを最高の音に仕上げました!というお知らせ?でした(笑)。
JBL 「4312M Ⅱ WX」に決めたもう一つの理由
実はあともう一つJBL 「4312M Ⅱ WX」に決めた理由があるんです。
なにこれ??これは、もう生産中止になっているのですが、FOSTEのNF-01Aというパワードスピーカーです。
「NF-01A」は、音楽制作用のモニタースピーカー
この「NF-01A」は実はもう生産完了になっているんですが、音楽制作用のモニタースピーカーなんですね。
名機と言われて久しく、多くのレコーディングスタジオでも使われています。
実はこれを所有しているんです。
「NF-01A」の音の特徴
このスピーカーの解像度はすさまじいです。膨大な情報量を持つ音楽でも、なんなく最高の音で出してきます。全音域がくっきりと出ます。低音もバリバリでますね。
音像も粒が細かく、くっきりしています。以前これでJazzのレコードも聴いていましたが、アナログの味は失われるものの、音がくっきりしていて違和感もありませんでした。
一番本領発揮するのが、やっぱり電子音楽ですかね。粒の細かいグリッチ系のサウンドや、サイン波を多用する音楽も難なくカバーしちゃいます。
一言で言ってしまえば、原音を忠実に再現する万能スピーカーです。
メーカー | FOSTEX |
拠点国 | 日本 |
モデル | NF-01A |
ユニット | 2WAY バスレフ型 |
出力音圧レベル | 104dB |
再生周波数帯域 | 55Hz〜40kHz |
インピーダンス | 8Ω |
サイズ(mm) | 187 |
280 | |
305 | |
重さ(kg) | 9.6 |
価格(定価) | \99,600 |
価格(店頭価格) | – |
デザイン(独断) | 〇 |
「NF-01A」から見ればJBL以外のモデルの音が中途半端に聴こえてしまう
今はセッティングしていませんが、この音を知っているから、今回ご紹介したJBL以外のメーカーのモデルが非常に中途半端に感じるんですね。
もし、僕がこれを所有していなかったら、迷っていたかもしれませんね。でも、結局それでも「4312M Ⅱ WX」を選んだろうなあ。
何ですかね、さっきも書きましたが変な魅力、中毒性がありますね。他のスピーカーのようにスマートじゃないところが最高なんです。
まとめ
やはり、何度も言うようですが、すべての音をカバーするスピーカーは存在しないと断言してもいいと思います。
それにアンプとの相性もありますし、ケーブル一つで音が激変する世界です。
僕は今回 JBL 「4312M Ⅱ WX」を選びました(既に買いました。配送待ちです)。
このスピーカーはレコードやカセット、はたまたCDを買うのが楽しみになるスピーカー(ここ大事!)だと思います。
この作品だと、どんな音になるのかなー?なんて考えながら、レコ屋に行くのって楽しくないですか?僕はワクワクします。
この欠点だらけのスピーカーとこれからずっと付き合っていきたいと思います。
JBL 「4312M Ⅱ WX」のデザインに勝るものなし!
最後に言い忘れてました。
JBL 「4312M Ⅱ WX」はデザインが一番かっこいい!!
実はこれに尽きるかもしれません(笑)
またレポートします。みなさまも良い音楽ライフをお過ごしください。
※レビュー書きました! ⇒ 【レビュー】JBL 4312M II WXが我が家にやってきた
※ここから1年後、アンプ探しの旅へ ⇒ JBL 4312M II WXの音が激変!アンプ探しの旅
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