奈良さんの大規模展示会がとうとう豊田美術館ではじまりました。
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奈良美智 for better or worse Works : 1987-2017
2017年7月15日[土]-2017年9月24日[日]
Jul. 15 [Sat.] – Sep. 24 [Sun.], 2017
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この文章を書いている時点で既に展示会は始まっていて、情報は溢れていますので、展示会の内容の詳細は書きませんが、とにかくここまで大規模(300点の作品を展示、かつ日本未発表作品を含む)な奈良さんの展示会は日本で初めてだと思います。
奈良さんが学生時代を過ごした愛知での開催、その原点回帰的なこだわりも良くわかります。
現代美術家 奈良美智とは?
僕が奈良さんの作品と出会ったのはずいぶん前になりますが、本当にその本質を理解できるようになったのは4年ほど前からです。
奈良さんといえば、「小さな女の子の絵」を描いている人。
奈良さんの絵から伝わってくるもの
その小さな女の子達には特徴があり、どの絵においても伝わってくるのが、内省的なものです。それは孤独であったり、悲しみであったり、時には怒りであったりと決してポジティビティを感じる絵ではありません。
奈良さんはドイツへ。その理由
奈良さんは、日本で美大(武蔵美、愛知県立芸術大学)を卒業したあと、ドイツに渡り、ドイツ国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに入学します。
とある教授に師事したけど、その教授とはドイツ時代に3回ほどしか会ってないそうです。
なんで??(笑
奈良さんは結局12年間ドイツで過ごしました。
奈良さんがドイツに行った理由は、孤独になりたかったからだそうです。
とことん自分を見つめ、自分の心の深い深いところ(村上春樹の井戸というメタファーと同じ)まで潜っていき、それを作品として吐き出す。
奈良さんは言います。「僕は高度なドローイングももちろんできるんですよ。だけど、自分を表現しようとするとどうしてもあの女の子になっちゃうんです」。
僕は奈良さんの絵に救われた
僕は奈良さんの絵に救われました。
4年ほど前、病気で一年間休職していた時です。
非常に苦しい一年でした。マイナスなことに心が支配されていました。そこから抜け出せず、これからどう生きていけばいいのかさえわからなくなっていました。
大好きな本を読むことも音楽を聴くこともその時は苦痛でした。
奈良さんの絵を改めて観た。やっとわかった気がした
そんなときに、奈良さんの絵を改めてみたんです。
そうすると、少女達が投げかけてくるナイフのように尖がったものが、自分の心に突き刺さってきたのです。でもそれと同時に、深く深く癒されました。
彼女達は奈良さんの分身であり、やはりそこにある要素は怒りと悲しみ、そして孤独です。
そして何より僕が救われたのは、嘘がないというところでした。
奈良さんはいまだに自身の青森の訛りを直そうともしません。
今や海外では作品が一億以上で落札されることもざらなのに、お金は自分が最低限暮らしていける程度に持っていればいいと、ご自身の絵で得たお金を色んなところに寄付をされています。
(311の被災地には1億以上のお金を寄付されたそうです)
それが素晴らしいと言っているわけではありません。
奈良さんが自分の中に「嘘」が生まれることを一番恐れているのがわかるんです。
そこが本当に好きなんです。
本物のアーティストは嘘のない状態をずっとキープできる人
色んなアーティストがいますが、特にミュージシャンはファーストアルバムが一番良かったと言われることが多いです。
今まで溜まっていた初期衝動的な思いがそこに全部吐き出されるから、特にファーストはヒリヒリしたものが生まれます。
そして次の作品を作るときに、自分の心の井戸に源泉がまだあればよいですが、それが足りない場合は、どうしても頭で考えた作為的なものしか作ることができません。
なぜここまで言えるかというと、僕自身が音楽を作っているからなんです。
本当にすごいアーティストは、この嘘のない状態をずっとキープすることができる人だと思っています。
僕ももちろん、東京から観に行きます。
今からすごく楽しみです!
今回の展示会に合わせて特集号でました。
奈良さんを知るなら、まずこれ。凄い情報量です。美術手帖全記録。
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