フライング・ロータス(Flying Lotus)の初監督映画「KUSO」がこの夏海外で公開されます。
これがサンダンス映画祭(アメリカの映画祭。ユタ州のスキーリゾート地で有名なパークシティで、1978年より毎年1月中旬から11
フライング・ロータス(Flying Lotus)ってそもそも誰?
フライングロータス(Flying Lotus)ことスティーヴ・エリソンは、カリフォルニアの音楽家・DJ・音楽プロデューサーです。彼の作り出す音楽はヒップホップをベースとしているのですが、ジャジーなフレーズやアコースティック楽器のサンプリング、フェンダーローズなどヴィンテージ楽器に代表される独特なアナログ音(みなさんも絶対にどこかで聴いたことがありますよ)、ノイズやクラップ、変則ビート、シンセパッド、R&B的なフレーズ、など何でも放り込んで構成されています。
何でもごちゃまぜにミックスされているんですが、ベースにあるのが「癒し」であり、「グルーヴ」であり、そこにカオティックなものが絶妙なバランスで配置されているという、めちゃくちゃかっこいい音楽を作っている人です。
フライング・ロータスは音楽家のサラブレット
彼の叔父は、実はあのジョンコルトレーンなんです!
ジョンコルトレーン(John Coltrane)
コルトレーンと言えば、1950年代にモダンジャズの潮流に乗り、60年代からは西洋的な価値観ではなく、東洋的な神秘主義といいますか、スピリチュアルなものに傾倒し(ビートルズのジョージハリスンもそうでしたね)、西洋音階を無視した咽び泣くようなサックスを吹いたジャズメンです。いわゆるフリージャズを確立した人で、マイルスデイビスと並び、当時の文化に大きな影響を与えました。
60年代当時の日本では、ジャズ喫茶が文化人の溜まり場でしたが、タバコの煙が立ち込める空間で、コルトレーンのフリージャズが大爆音で流れていたといいます。そんな空間に村上春樹も村上龍も出入りしていた時代です(村上春樹はバイト店員として)。
その音は今聴いてもモダンで洗練されていて、彼の影響は今も衰えていません。フォロアーも後をたちません。コルトレーンの現代解釈的バンドも多く存在します。
僕がおすすめするフライング・ロータスの三部作
フライング・ロータスは今まで5枚のアルバムをリリースしています。
その中でも、
2008年リリースの
2010年リリースの
2014年リリースの
をおすすめします。僕が彼のことを知ったのは「Los Angeles」からですが、きっかけは友人からの「今、いちばんヤバイのはフライング・ロータスだ。凄いとしか言いようがない。HipHopをズタズタに解体して色んなエッセンスをミックスして再構築してる」の一言でした。どうやったらこんな音楽を作れるんだろうか。タイム感もめちゃくちゃのようでいて、変なグルーヴがある。彼のことを調べていったら、ジョンコルトレーンの甥じゃないか!とそれだけで納得してしまいました(笑)。
コルトレーンと同じ抽象度の高い音楽へ
最近の彼の作品は、コルトレーンと同じようにどんどん抽象度の高い音楽になってきています。まるで天国にいるようなスピリチュアルな音楽に。僕がこの中でも一番好きなのが、最新作である「You’re Dead!」です。アナログ盤で持っています。
フライング・ロータスのキャリアの中で一つの頂点に達した作品だと思います。
その証拠に、このアルバムから彼は映画表現=今回の「KUSO」に移行しました。
「KUSO」は「You’re Dead!」の延長線上にある!
TOPの写真が「You’re Dead」のジャケット。フライング・ロータスは親日家で、日本のアニメや漫画、ゲーム、そして映画(三池崇史・塚本晋也・北野武を賞賛しています)のファンだと公言しています。
「You’re Dead!」のアートワークは日本の漫画家-駕籠真太郎が担当
現キャリアで一番新しいアルバム「You’re Dead!」のアートワーク(ジャケットやプロモーションビデオなど)も日本の漫画家-駕籠真太郎が担当しています。駕籠真太郎の作品はエログロのイラスト、マンガで有名(なのでここには載せれません笑)なんですが、結構これが海外アーティストから注目を集めているようで、フライング・ロータス以外にも駕籠真太郎のイラストを採用(依頼)している方々をよくみかけます。
僕は「You’re Dead!」が発売された2014年に、中野ブロードウェイのギャラリー「GALLERY リトルハイ」で開催された駕籠真太郎先生の個展に行き、実際にお話しする機会があったのですが、アートワークに関し、フライング・ロータス側からいきなり電話がかかってきたそうです(笑)。
その時先生はフライング・ロータスって誰??って感じだったそうです。先生は変人の類に入る方だと思うので、フライング・ロータスについて「今でも興味ない」とおっしゃってました(笑)。
フライング・ロータスの音楽を愛好する僕が「KUSO」から感じるもの
「KUSO」は今まで彼の音楽を聴いてきた人にとっては、「なるほどー、そうきたか」という感想を持つと思います。なぜなら、この映画は彼の音楽的指向の映画版だからです(断言しちゃいます)。端的に言ってしまえば、
映画版DJ、はたまたコラージュアート
でしょうか。
もちろん、日本での公開はまだ先ですし、海外でも予告編しか一般には公開されていないので、それを観ただけの感想になりますが、完全にこれは映画の概念を変えると思います。大袈裟ですかね。
コラージュアート的な映画
こういうコラージュアート的な映画、フランスにおけるゴダール(同軸で語ると怒られそうですが)や、デヴィッド・リンチなど、観るんじゃなく感じる映画というものは存在しています。しかし、フライング・ロータスはこの要素に加え、日本独特の文化や、アメリカのブラックユーモア的な要素をミックスして、変な映画を作りました。
音楽的な要素も満載
音楽と同じで、時間軸(シーケンス)で表現する静寂やフックもすごく意識されているように感じます。日本文化とのミックスという点では、初期のクエンティン・
まとめ
今回は音楽業界の異端児、これからは映画業界の異端児になるであろうフライング・ロータスのことを紹介してきました。これをきっかけに「KUSO」を観る人や、彼の音楽を聴く人が増えると嬉しいなと思います。
「KUSO」の日本公開が楽しみですね!
追記)
「KUSO」は動画配信サイトShudderで公開されていますが、残念ながら日本では視聴不可(アメリカ・カナダ・イギリス・アイルランドで視聴可能)のようです。観てー!
な、なんと!ついに日本公開!
この追記を書いているのが、2018年7月15日ですから、1年越しだったわけですね。途中で日本公開はないという話が伝わってきたので、完全に諦めていたのですが、き、きましたね、、。ついに。
ただーし!一週間限定だそうです。しかも渋谷のシネクイントのみ!世知辛いなあ。
Flying Lotusが8月17日に幕張メッセで行なわれる『SONIC MANIA 2018』に出演するので、それに合わせた公開になったんだろうか。。
まあ、観れるならそれでいいです。
【概要】
2018年8月18日(土)からシネクイントで1週間限定公開
監督:スティーヴ
脚本:スティーヴ、デヴィッド・ファース、ザック・フォックス
音楽:Flying Lotus、ジョージ・クリントン、Aphex Twin、山岡晃
出演:
ハンニバル・バーエス
ジョージ・クリントン
デヴィッド・ファース
上映時間:94分
配給:パルコ
コメント