※この写真は「アレキサンダー・グロンスキー展」で展示されていた作品です。主催のYUKA TSURUNO GALLERYから撮影掲載の許可を頂いています
この写真は、ちょうど今から4年前(2014年10月)、東京は東雲のYUKA TSURUNO GALLERYで開かれた「アレキサンダー・グロンスキー展」で撮ったものです。
撮影OKだったので、すかさずiPhoneで撮りましたが、かなりぼやけてるし、影も写ってる。。
僕は常にぐっとくる写真家を無意識的に探しているのですが、なかなか好みの写真家に出会えません。だけどこのAlexander Gronsky(アレキサンダー・グロンスキー)の写真、世界観には久しぶりに揺さぶられました。
彼の写真は出身地であるエストニアを中心に、バルト三国、ロシア、いわゆる北欧の厳寒地域を中心に撮影されています。
Alexander Gronsky(アレキサンダー・グロンスキー)とは
Alexander Gronsky(アレキサンダー・グロンスキー)はエストニア出身、1980年生まれの写真家です。20代後半からプレスカメラマンとしてキャリアを積みます。徐々に写真家としての活動を増やしていき、2008年頃から現代ロシアのランドスケープをテーマとした作品を発表していきます。2009年、Aperture Portfolio Prize受賞、2010年にはFoam Paul HufAwardを受賞しています。 現在は故郷のエストニアを離れ、同じバルト三国であるラトビアに移住し、活動の拠点としています。
Alexander Gronsky(アレキサンダー・グロンスキー)の出身地エストニアの被支配の歴史
小国エストニアはドイツ、デンマーク、スウェーデンのヨーロッパ諸国、そして18世紀からはロシアに支配されてきました。1918年に独立するまでその被支配の歴史は続きます。思うにエストニアは、いわゆるヨーロッパのきらびやかでデカダンな文化と、社会主義がミックスされた特異なものを持っているのではないかと勝手に想像してるんですがどうなんでしょう。
自由国家としてのエストニア、そして最先端電子国家
今のエストニアは国民、及び企業の自由度が半端なく高い(≒権力が横行していない)国家として有名なんですよね。世界最先端の電子国家としても有名です。行政手続きの99%が電子化されていたり(あらゆるコストの削減、ペーパーレス化)、国民のデジタル化された個人情報をハイセキュアなブロックチェーンで管理していたり、最近では医療分野(ヘルスケア)の電子化に力を入れています。いわゆる普通の国と違うのが、この電子化の適用レベルが半端ないということです。社会インフラが完全にデジタルで整備されつつあります。
エストニアはこのような取り組みが成功している世界唯一の国家なんです。
このエストニアの取り組みは全世界が注目しています(※僕も昨年ブロックチェーンをテーマとした、とあるイベントでこのエストニアの話を熱い思いできいていた一人です)。ここには長い被支配の歴史に対する大きな反動が、リアルな「自由」として現れていると思います。
Alexander Gronsky(アレキサンダー・グロンスキー)はなぜ現代ロシアを題材とするのか
トップの写真はアレキサンダー・グロンスキーの代表作「The Edge」の中の一枚。ロシアの郊外風景を撮った作品です。
世界最先端の自由国家になったエストニアいてなぜこの今、むしろ自由後進国であるロシアを題材にするのでしょうか。僕が感じたのは、「郷愁」であったり、「皮肉」だったり、「寂しさ」だったり。自由や効率化のマックス、それが当たり前の日常になると、その逆を志向してしまうのも人間の性なのでしょうか。デジタライズで失うものは大きいというのはもう使い古された言葉です。その「失ったもの」を誰よりも敏感に感じてしまうのが芸術家なのかも。
写真をじっくり見て感じましょう。写真って本当に面白いですね。
Alexander Gronsky(アレキサンダー・グロンスキー)の作品
LESS THAN ONE ~ 2006 – 2008
ロシアの辺境を撮った作品。そこは一平方キロメートルに1人以下という人口密度という、ロシアの一番外側に位置する超過疎地域。展示会でもセレクトされていたのが下の写真です。凄く静謐な写真ですよね。十字架が想起させるイメージと、風景とのバランス。ホント好きですね。
※この写真は「アレキサンダー・グロンスキー展」で展示されていた作品です。主催のYUKA TSURUNO GALLERYから撮影掲載の許可を頂いています
THE EDGE ~ 2008 – 2010
旧ソ連時代の集合住宅が多く見られるモスクワ郊外の雪景色が題材となっています。
これは、メディア露出が一番多い一枚。犬も寒いんですね。赤い服を着てます。
※この写真は「アレキサンダー・グロンスキー展」で展示されていた作品です。主催のYUKA TSURUNO GALLERYから撮影掲載の許可を頂いています
ロシアのインフラの残骸。後ろのクレーン車とのコントラストが綺麗です。スキーをしてる人や氷の池?を泳ぐ人が牧歌的に見えたり、ふざけて見えたり、皮肉?遊び?なんか、「ニューヨークのさびれまくった地域、グラフティアートが施されたボロボロの建物群の中で、スケボーをする少年たちとその風景」的なものとシンクロしました。
※この写真は「アレキサンダー・グロンスキー展」で展示されていた作品です。主催のYUKA TSURUNO GALLERYから撮影掲載の許可を頂いています
トップの写真もこのシリーズの中の一枚です。
pastoral ~ 2009 – 2012
こちらもモスクワです。日中のモスクワと田舎町を繊細なカラーで表現しています。これ、唯一新品が発売されます(10月)。
※この写真は「アレキサンダー・グロンスキー展」で展示されていた作品です。主催のYUKA TSURUNO GALLERYから撮影掲載の許可を頂いています
その他の作品
Alexander Gronsky(アレキサンダー・グロンスキー)の作品は、今までご紹介してきたものが有名どころですが、他にもあります。画像はないですが、紹介していきますね。
- MOUNTAIN AND WATERS ~ 2010 – 2011
… 霧の中国を撮った作品 - NORILSK ~ 2013
… ロシアのノリリスクを撮った作品 - RECONSTRUCTION
… ロシアとウクライナの軍隊を撮った作品。おそらく軍事練習をしている風景。 - Schema
… シリーズものです・SchemaⅠ:「On Defferense」 St.Petersburg ~ 2014
・SchemaⅡ:「On Repetition」 Russia ~ 2006,2015
・SchemaⅢ:「View of Mt.Fuji」Japan ~ 2014,2015
・SchemaⅣ:「On Mirror Reflection」Collaboration with Ksenia Babushkina ・Various locations ~ 2013 – 2015
・SchemaⅤ:「On Luminosity」Collaboration with Ksenia Babushkina ~ 2013 – 2015
・SchemaⅥ:「On Representation of Blue and Red Parts of Visible Spectrum」jerusalem ~ 2015
・SchemaⅦ:「Om Image Schema」Collaboration with Ksenia Babushkina ~ 2013 – 2015
Alexander Gronsky(アレキサンダー・グロンスキー)の写真集はどこで買える?
写真集。今のところ新品で手に入るのは、上の「pastoral」のみです。「LESS THAN ONE」は日本のインディ出版社であるTYCOON BOOKS(タイクーン・ブックス)から出版されていますが、もちろんソールドアウト。ただし、スペシャルエディション(プリント付)が販売されています(2018.9.30現在)。お値段、おお、なんと3万8千円です。プリント額装で注文すれば4万8千円。アレキサンダー・グロンスキーがもっと有名になったらこの値段では絶対買えないでしょうから、今のうちに買いかもしれませんね。これは欲しいなあ。○に隠れて買うかなww。他の写真集については、中古を探すしかありませんが、プレミアの付き方は比較的緩やかだと思います。
まとめ
さて、いかがでしたでしょうか。Alexander Gronsky(アレキサンダー・グロンスキー)。僕が行った展示会は、Alexander Gronsky(アレキサンダー・グロンスキー)の日本で初めての展示会だったんですが、実はかなり小規模なもので、展示は10点に限られていました。まだまだ日本では有名ではありません。知る人ぞ知る?
これを機会にアレキサンダー・グロンスキーの写真を好きになる人が増えれば嬉しいです。
それはみなさま、よいフォトライフを!
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